実務者研修って本当に必要?──現場のリアルと“学び直し”の価値

「実務者研修って、お金もかかるし、スクーリングも大変そう…」
そう感じた方、多いと思います。
正直、私も最初にこの制度を聞いたときはそうでした。

私はヘルパー2級からキャリアを始め、3年の実務経験と実技試験で介護福祉士を取りました。
それから3年ほどして、制度が大きく変わったんです。
「これからは実務者研修の修了が必要になります」と聞いたとき、
思わず「うわぁ、時代が変わったな」とつぶやいたのを覚えています。

何より驚いたのは、費用の違いでした。
私の時代は実技試験対策講座を受ける人もいましたが、それでも数万円。
それが10万円前後になると聞いて、
「これじゃあ受けづらくなる人も多いだろうな」と感じたんです。

でも同時に、「もうこれは避けて通れない道なんだろうな」とも思いました。
介護福祉士を目指す以上、どこかで学びの時間をつくる必要がある。
この制度をきっかけに、「資格は早めに取るに越したことはない」と
身にしみて感じたのを今でも覚えています。


学びの現場で見た“表情の変化”──それがすべてを物語っていた

その数年後、私は法人の教育担当として、
実務者研修の養成校と連携して法人内研修を立ち上げることになりました。
毎週日曜日の開講。
一番に会場に行って鍵を開け、机を並べるのが私の役目でした。

正直、準備は大変でしたよ。
でも、その教室に集まる職員たちの表情が、本当にイキイキしていたんです。
普段は忙しさに追われているスタッフが、
グループワークで意見を交わしながら笑っている。
その光景を見た瞬間、「ああ、これは必要な研修だ」と思いました。

当時の法人は教育制度がまだ整っておらず、OJTも十分に機能していませんでした。
だからこそ、日常の仕事を離れて学ぶ時間が、
どれだけ貴重で、刺激になるかを目の当たりにしたんです。

講師の方々も素晴らしく、介護過程Ⅲの授業では
「考える介護」の意味を丁寧に伝えてくださいました。
スタッフが発言する姿を見ながら、
“学びを通じて人は変わる”ということを、何度も感じました。

そして私自身もその後、実務者研修教員研修を受講しました。
社会福祉士のときは1年間通学して座学を受けましたが、
介護福祉士は実務経験ルートで取得していたので、
実は「介護過程」を体系的に学んだことがなかったんです。

だからこそ思います。
実務者研修は、ただの資格取得の条件ではありません。
現場で働く一人ひとりが“自分の介護を言葉にできるようになる”ための、
大切な学びの場なんだと。


大変さの中で見えた「学びの差」──経験だけでは埋まらないもの

実務者研修を法人内で開講したとき、
ベテランから新人まで、本当に多くのスタッフが参加してくれました。
法人のバックアップもあり、希望する人はほぼ全員が受講できたんです。

でも、始まってみると感じたのは「経験による差」でした。
長く現場を経験してきた人ほど、これまでのやり方や感覚が体に染みついています。
どうしても、新しい知識や理論よりも「これまでのやり方で十分」という気持ちが出てくる。
一方で、入職して間もない職員は、
吸収力が高く、素直に学びを受け止めているのが印象的でした。

日曜日の研修は、家庭との両立も大変でした。
「子どもを送り出してから駆けつけてきた」という職員もいれば、
夜勤明けでそのまま参加していた人もいました。
それでも、教室に入ると皆の顔が引き締まり、真剣そのものでした。

私はその姿を見て、「経験年数ではなく、学びの姿勢こそが成長を分ける」と感じました。
現場の忙しさに慣れた人ほど、
一度立ち止まって学び直すことで、自分の介護を見つめ直せる。
実務者研修は、まさにそんな“再スタートの場”でもあるんです。


「いらない派」に伝えたい、制度の裏側と本当の意味

現場では今でも、「実務者研修なんていらない」「経験があれば十分」という声を耳にします。
たしかに、ベテランの方々の技術は確かなものですし、
長年の勘や観察力は教科書では学べません。
その気持ち、よくわかります。

でも、数字を見てみると“当時の実情”が見えてきます。
2012年当時、介護福祉士を取得した人のうち約82%が実務経験ルート。
養成施設ルートは約12%、福祉系高校ルートはわずか0.6%しかいませんでした。
つまり、ほとんどの人が“現場経験で学んできた世代”だったんです。

だからこそ、国は「学びの土台を整える」ことを重視し始めました。
その流れの中で、2012年度に実務者研修制度が創設され、
2016年度から国家試験の受験資格として修了が必須化
されました。

これは単なるハードルではなく、介護職全体の“質の底上げ”をねらった制度です。

実務者研修の目的は、3つあると私は思います。

一つは、質の向上
医療的ケアや介護過程など、より安全で根拠ある支援を行うために必要な知識を体系的に学ぶ。

二つ目は、キャリアパスの明確化
介護職の成長を「見える化」することで、自分の頑張りが形として実感できる。

そして三つ目は、専門職としての信頼の確立です。
国が正式に受講を義務づけたのは、
介護を「誰でもできる仕事」から「専門性のある仕事」へと
位置づけ直すための大きな一歩でもあります。

現場で学んだ人も、座学で学ぶ人も、
目指すところは同じ。「より良い支援を届けたい」という思いです。
だから私は、“いらない派”の声を否定するのではなく、
「それだけ現場を大事にしてきた証」として受け止めたいと思っています。

そのうえで伝えたいのは──
“経験を活かすためにこそ、学ぶ”。
それが、今の時代の介護職に求められている姿なんだと思います。


「いつ受けるか」より「いつ学びたくなるか」

「実務者研修はいつ受けるのがいいですか?」
よく聞かれる質問です。

私はいつも、「学びたいと思ったときがベスト」と答えています。

多くの人が「実務経験3年以上で受けるもの」と思い込んでいますが、
実は未経験でも、初任者研修を終えた段階で受講できます。

新人のうちに受けるメリットは、何より“理論と実践の一致”。
現場で起こることを、学びながら整理できるからです。
「なぜそうするのか」を早い段階で理解しておくと、
後からの成長スピードがまったく違ってきます。

一方で、3〜5年目のタイミングも悪くありません。
現場の経験が積み重なり、利用者さんとの関わりに“自分の型”が見えてくる頃。
この時期に改めて介護過程を学ぶと、
「あの時の支援にはこういう根拠があったのか」と再発見があるんです。

そしてベテラン層にとっても、実務者研修は「棚卸しの機会」になります。
慣れた手技や声かけを見直し、次世代への指導に活かす。
学びは、現場を磨く力そのものなんですよね。

だからこそ、「今さら…」なんて思わなくて大丈夫です。
学びに“遅い”も“早い”もありません。
「今の自分を、もう一歩成長させたい」と感じたときが、
あなたにとっての最良のタイミングなんです。


スクール選びで後悔しないために

実務者研修を申し込むときに、多くの人が気にするのが「費用」。
もちろん、10万円前後の出費は決して小さくありません。
でも、安さだけで選ぶのは少し危険です。

私が見てきた中でも、サポート体制や講師の質で差が出るケースは多くあります。
通信講座中心のスクールは、自分のペースで進められるのが魅力ですが、
添削や質問対応が遅いと、思った以上に孤独になることも。

通学型は講師や仲間とのつながりが強く、
モチベーションを保ちやすい反面、
日程調整や交通費などの負担もあります。

その中間として、最近は「併用型」も増えています。
動画学習とスクーリングを組み合わせた形式で、
働きながらでも無理なく続けられると人気です。

スクールを選ぶときは、次の3点をチェックしてみてください。

1️⃣ 講師や運営の実績があるか(口コミや卒業者の声も参考に)
2️⃣ 通学日程が無理なく組めるか(夜勤明けや休日に重ならないか)
3️⃣ 質問サポートが充実しているか(メール・LINEなど対応方法を確認)

この3つを押さえておけば、途中でつまずくリスクはぐっと減ります。
実務者研修は、学びの内容も大切ですが、
「続けやすい環境を選ぶ」ことが、成功の鍵なんです。


未来の自分へ投資する時間にしよう

実務者研修は、たしかに手間も費用もかかります。
でも、それは“自分の未来に投資する時間”だと思います。

学んだことは、必ずどこかで自分を助けてくれます。
利用者さんへの関わり方、チームでの伝え方、
そして後輩への教え方──すべてに生きてくる。

私自身、教員研修を受けてあらためて感じました。
知識を学び直すことは、心を整えることでもあります。
介護は人の暮らしを支える仕事だからこそ、
「根拠を持って関わる」ことが何よりの信頼につながるんです。

この文章を読んでくださっているあなたが、
もし少しでも迷っているなら、どうか一歩を踏み出してみてください。
大丈夫。学ぶことに無駄なんてありません。

そして、いつか介護福祉士の資格を手にしたとき、
きっと誇らしい気持ちになります。
それは、“過去の自分が努力した証”だから。

あなたのその一歩を、私は心から応援しています。


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