──現場20年の私が伝えたい「距離の取り方」と「逃げてもいいという選択」
「人間関係がつらい」──
介護の現場で働いていると、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
私もその一人でした。
ほんとうにしんどかったときは、休みの日ですら起き上がれませんでした。
日中もなんだか気分が晴れず、一日中寝て過ごすこともありました。
朝、制服に袖を通すだけで胸が重くなる。
職場に近づくほど、足がどんどん重くなる。
そんな日々が続くと、「自分はこの仕事に向いてないのかな」と思ってしまうんですよね。
あの頃の職場は、常にピリピリしていました。
怖い先輩がいて、誰も意見を言えない。
おどおどしながら仕事をしている新人たち。
ミスをすれば「なんでできないの?」と冷たい視線が刺さる。
雰囲気が重いから、人が長く続かない。
いつの間にか辞めていく──そんな職場でした。
実は、こうした「人間関係のストレス」は、介護業界全体の課題でもあります。
厚生労働省の調査でも、離職理由の上位には“職場の人間関係”が毎年挙げられているんです。
どんなにやりがいがあっても、関係がこじれれば心は消耗してしまう。
それほど、職場の人間関係というのは大きなテーマなんですよね。
でも、私はそこで学びました。
人間関係につまずいたのは、自分が弱かったからじゃない。
「人と距離を取ること」を知らなかっただけなんです。
あの頃の私と同じように悩んでいる人に、
「大丈夫。あなたもきっと抜け出せますよ」と、今は伝えたいんです。
人間関係の悩みは、「人」ではなく「構造」にある
管理者として働くようになってから、
職員からの相談でいちばん多いのは、やはり「人間関係」なんです。
ほんとうに、多い。
どの職場でも、かならず誰かがこの悩みを抱えています。
たとえば、仲の良すぎる二人が中心になってチームが分裂してしまったり、
新人職員が正論を貫きすぎて、先輩のプライドを傷つけてしまったり。
世代が違えば、体力や価値観、仕事への向き合い方も違う。
さらに介護と看護の間では、「どちらが主導するか」で微妙な温度差が生まれます。
こうしたトラブルを見ていると、
「誰が悪い」とか「性格が合わない」という話ではないと気づくんです。
本当の原因は、“構造”のほうにある。
つまり、チームの中で情報共有の仕組みがなかったり、
意思決定の流れが不明確だったり、
リーダーや管理者が一部に頼りすぎていたり。
そうした“見えない歪み”が、人間関係のトラブルを生むんですよね。
だから私は、できるだけ「人」を責めないようにしています。
たとえ表面上は衝突していても、
仕組みを整えれば、関係も自然と落ち着いていく。
人間関係は“性格の問題”ではなく、“構造の問題”。
そう気づいたときから、私のマネジメントの軸が少し変わりました。
感情ではなく、事実で整理する
人間関係の相談を受けていると、
最初のうちはみんな感情がいっぱいなんです。
「もう限界です」「あの人の顔を見るだけでしんどい」──
その言葉の奥には、悲しみや悔しさ、無力感が詰まっています。
私も最初の頃は、その感情に引きずられていました。
「それはひどいね」「わかるよ」と共感しすぎてしまう。
でも、そうすると話はどんどん感情的になって、
本当に解くべき“結び目”が見えなくなるんですよね。
だから今は、できるだけ「事実で整理する」ようにしています。
面談では、相手に紙とペンを渡して、
「いつ」「どこで」「誰が」「何をしたか」を書き出してもらう。
箇条書きにしてみると、不思議と冷静になれるんです。
聞いている私自身も、感情の波に巻き込まれずに済みます。
文字にした瞬間、「あれ、思ってたより大したことじゃないかも」と気づくこともある。
逆に、「これは組織として取り上げるべき問題だな」と整理できることもある。
そうやって事実と感情を分けることで、次の一歩が見えるんです。
私は、どんな相談にも“ふーん、くらい”の距離感で向き合うようにしています。
冷たいわけではなく、そのほうが落ち着いて話を聞けるから。
感情を受け止めながらも、沈まないようにする──
それが、相談を受ける側のバランスなんですよね。
「辞めたい」と言われたときに思うこと
「もう、辞めたいです。」
その一言を聞くたびに、胸の奥が少し痛くなります。
机の上で手を組んで、しばらく沈黙が流れる。
私は、まず相手の表情を見ます。
その“辞めたい”が、どんな重さで出てきた言葉なのかを感じ取るためです。
“辞めたい”にもいろんな種類があると思うんです。
ほんとは逃げたいだけの「辞めたい」。
少し休みたいだけの「辞めたい」。
そして、本当に限界まで頑張っての「辞めたい」。
それぞれ、まったく違う心の叫びなんですよね。
だから私は、まずこう聞きます。
「どんなことがあったの?」「話せる範囲で話してみて?」
「どうしたいと思ってる?」
もし本人の心が少しでも動ける余白を残しているなら、
「一度そこから離れてみようか?」とか「話し合ってみようか?」と提案します。
人間関係のもつれは、どちらか一方が悪いとは限りません。
だからこそ、いきなり結論を急がず、まず整える。
それでも難しいときは、思い切って“距離を取る”ことをすすめます。
離すことも、立派な支援なんです。
お互いがこれ以上傷つかないための、優しい選択だと思っています。
「合わない人」との付き合い方
どんな職場にも、正直「この人、ちょっと苦手だな」と感じる相手はいますよね。
私にももちろんいます。
朝、出勤の支度をしながら「今日はあの人と同じシフトか…」と思うだけで、
少し胃が重くなることもありました。
そんなときは、「どう接すれば波風立たないだろう」と、そればかり考えていました。
でもある日、気づいたんです。
“相手を変えよう”と頑張るほど、自分が苦しくなるって。
だから私は、良い意味で“仕事は仕事”と割り切るようにしました。
冷たくするということではなく、
「人としては苦手でも、仕事では協力できる」という距離感を持つこと。
それだけで、関係はずっとラクになるんです。
一緒に働くうえで大事なのは、仲良しグループを作ることじゃありません。
“仕事の価値観を共有できる仲間”を見つけることです。
お互いに「いいケアをしたい」という想いさえあれば、
多少性格が合わなくても、信頼関係は築けます。
管理者としても同じです。
感情ではなく、ルールと目的で判断する。
それを徹底していれば、どんなに意見が違っても、
組織としての軸はブレません。
むしろ、考え方の違う人がいることでチームは強くなる──
今はそう思えるようになりました。
チームの“空気”をつくるのは仕組み
人間関係をよくするうえで、
私がいま大切にしているのは「近すぎず、遠すぎず」という距離感です。
若いころは、とにかく仲間意識を高めることが正解だと思っていました。
“チームは一心同体”──まるで昭和のスポ根のような考え方ですね。
でも今振り返ると、あの頃はお互いに息が詰まっていました。
距離が近すぎると、相手に期待しすぎてしまうんです。
そして、その期待が裏切られたときに「なんでわかってくれないの?」と傷ついてしまう。
人間関係は、火と同じだと思っています。
距離が近すぎると、摩擦熱で燃え上がる。
遠すぎると、チームが冷えてしまう。
ほどよい温度を保つには、一定のルールと仕組みが必要なんです。
だから私は、会議や面談の進め方にも少し工夫をしています。
会議では自分が話すのは3割、残りの7割は職員の意見を聞く時間にする。
そうすると、自然とチームの空気がやわらかくなり、
職員同士の関係も穏やかになるんです。
みんなが同じ考えでいる必要はありません。
大事なのは、“違いを受け入れられる仕組み”をつくること。
その土台さえあれば、多少意見がぶつかっても、チームは崩れません。
「合わない人がいるからこそ、チームは健全」
人間関係で悩んでいるときは、
「どうして自分だけこんなにうまくいかないんだろう」と思いがちです。
でもね、合わない人がいるのは当たり前なんです。
むしろ、いろんな人がいるからこそチームは健全に動くんですよ。
もし全員が同じ考え方だったら、物事はスムーズに進むかもしれません。
でもそれは、間違った方向に進んだとき、誰も止められないということでもあります。
意見の違いは、チームのブレーキでもあり、ハンドルでもある。
だから「合わない人がいる=悪いチーム」ではないんです。
私自身、転職を通してそれを実感しました。
人が変われば、空気も変わる。
そして、自分の“見えなかった面”が見えてくる。
新しい環境では、自分の良いところも、まだまだ努力が必要なところも、
自然と浮かび上がってくるんです。
人との出会いは、自分を磨く鏡みたいなものだな、と今では思います。
もし、いま人間関係で苦しんでいるなら、無理に我慢しなくていい。
環境を変えることも、立派な前進です。
逃げるように見えても、それは“自分を守る行動”です。
最後に、あの頃の自分へ。
そして、同じように悩んでいるあなたへ伝えたい。
どうなるかではなく、どうするかだ。
自分で決めることが、あなたの人生を強くしてくれます。
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🌿 てるよし式メッセージ
職場の人間関係で悩むのは、誰かを思いやっている証拠です。
どうか、自分を責めずに。
あなたの働き方には、いくつもの選択肢があります。
