「介護職って、誰にでもできる仕事でしょ?」
直接そう言われたわけではありません。でも、ネットやテレビ、そして職場の中からも、そんな空気を感じることはあります。
特に嫌なのが、年収ランキング。介護職はいつも下の方で、コメント欄では「だから誰にでもできる仕事なんだよ」とか、「もっと頑張った人がやる仕事じゃない」とか――。現場の大変さも、人との関わりの深さも知らずに、まるで“簡単な労働”のように語られてしまう。
悔しいですよね。
職場の“自虐発言”にも、心がざわつく
「どうせ誰でもできる仕事だし」
そんな言葉が、職場の会話で当たり前のように出てくるときがあります。
もちろん、言いたくなる気持ちもわかるんです。評価されにくい、給与も高くない、世間からの理解も薄い。そういう現実に、心が折れそうになる瞬間もありますよね。
でも、それを口にしてしまったら、自分たちの仕事の価値を、自分たちで下げてしまう気がするんです。
「その程度の気持ちと姿勢でやってるから、そう思われるんじゃないの?」……って、心の中で突っ込みたくなるときも、正直あります。
ただ、その言葉の裏には「本当はちゃんと認めてほしい」「でも現状はそうじゃない」っていう、切実な気持ちもあると思うんです。だからこそ、互いの仕事にもっと敬意を払い合える職場にしたいし、未来の介護職のためにも、今ここで踏ん張りたいと感じています。
これは“誰でもできる”ことなのか?
私はケアマネとして、特に認知症の方の支援に多く関わってきました。
「もう限界なんです」とご家族に相談されることも多く、施設やサービスにつなぐ前の段階で、何度も訪問して丁寧に関わることが求められます。
私は、その方が見ている世界を一緒に見るために、腹を括って関わります。介護者として向き合うのではなく、その人の隣に立ち、同じ景色を見るということを意識しています。
これは、言葉で言うほど簡単なことではありません。根気も必要だし、自分一人でできることでもない。チームや関係機関と力を合わせて、時間をかけて信頼関係を築いていくプロセスです。
当然、すべてがうまくいくわけではありません。むしろうまくいかないことのほうが多い。でも、その中で距離が少しずつ縮まり、あるときその方がこう言ってくれたんです。
「あなたの声は安心するね。」
その瞬間、「ああ、自分のやってきたことは間違ってなかった」と感じました。それまでご家族すら届かなかった心の奥に、少しだけ触れられたような気がしたんです。
理想ばかりではありません。でも、それでも向き合いたい
この話を聞いて、「そんなゆっくり関われる余裕、うちにはないよ」と思う方もいるかもしれません。
その通りです。現場には人手も時間も足りない。理想通りになんて、いきません。
だからこそ私は、こう考えています。
“全部がうまくいかない中で、たった一度でも「心が通った」と感じる瞬間があったなら、それはもう、誰でもできる仕事じゃない。”
一つひとつの支援が完璧じゃなくてもいい。でも、その瞬間を見逃さない感性と、向き合う覚悟がある人にしかできないことがあるんです。
それでも、誇りが持てないあなたへ
「いつまで続けられるだろう」「自分の仕事って、意味あるのかな」
そんなふうに感じる日があっても、いいと思います。私もそうでした。給与や評価にこだわっていた時期もあります。
でもあるとき、地域の方からこう言われたんです。
「あなたたちがいてくれて、本当に助かっています。」
その言葉で、他人からの評価に振り回されなくなりました。目の前の一人ひとりの生活を支えることに意味がある。そう思えるようになったとき、ようやく介護職としての誇りが自分の中に芽生えた気がします。
まとめ:見てる人は、見ている
「介護は誰にでもできる仕事」――
そう言われたときは、心の中で問い返してみてください。
「じゃあ、あなたはできるの?」
介護は、知識も技術も、人としての感性も問われる仕事です。確かに、誰でも最初からできるわけじゃない。でも、だからこそ、誰かにとってかけがえのない存在になれる。
今日も、あなたの介護を必要としている人がいます。
自分らしいケアを、胸を張って届けてください。
見てる人は、ちゃんと見てますから。
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