「有給、取りにくくて…」
介護の現場で働いていると、こういう声をよく聞きます。
申請しても断られる。雰囲気的に言い出せない。そもそも取れるとは思っていない。
でも、はっきり言います。
有給休暇は権利です。遠慮する必要はありません。
私は介護職20年、管理者として労務管理を担当してきました。
「有給が取れない」という状況には、2つのパターンがあります。
ひとつは職場の問題。もうひとつは知識の問題。
今日は両方の視点から、介護職の有給休暇について本音で話します。
介護職の有給休暇、基本のおさらい
まず基本から確認します。
有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利です。
付与日数の目安(週5日勤務の場合)
| 勤続年数 | 付与日数 |
|—|—|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日 |
パート・派遣でも有給は付与されます。
週の所定労働日数に応じて比例付与されるので「正社員だけ」は間違いです。
また2019年の法改正で、年10日以上の有給がある労働者には年5日の取得が義務化されました。これは会社側の義務であり、取らせなければ違法になります。
→ 労働基準法の基本についてはこちらも参考に。
「有給が取れない」には2つのパターンがある
パターン①:職場の問題
管理者として正直に言います。
「有給が取れない職場」には、構造的な問題があります。
- 人員配置がギリギリで、一人休むと回らない
- 有給申請を暗黙的に認めない文化がある
- 管理者が有給取得を重要視していない
これらは、本来管理者が解決すべき問題です。
スタッフが有給を取りにくい環境を放置しているということは、労務管理が機能していないということ。
「みんな忙しいから仕方ない」では済まされません。
パターン②:知識の問題
一方で、有給を取れる立場にあるのに「取ってはいけない」と思い込んでいるケースも多いです。
- 「申請すると迷惑をかける」
- 「断られるのが怖くて言い出せない」
- 「自分だけ休むのは申し訳ない」
この感覚、気持ちはわかります。
でも、有給を取ることは「迷惑をかけること」ではありません。権利を使うことです。
有給申請で「断られた」場合どうするか
有給申請を会社が断れるケースは、法律上限られています。
時季変更権という制度があり、「その日は業務に支障が出る」という場合に限り、会社は別の日への変更を求めることができます。
ただし、これはあくまで「別の日にする」ことができるだけで、有給そのものを消滅させることはできません。
「忙しいから有給はなし」は違法です。
管理者として見てきた「有給を上手に使う人」の特徴
採用担当・管理者として、有給をうまく活用しているスタッフには共通点がありました。
① 早めに申請する
「来月の○日に有給を取りたいのですが」と早めに伝えるスタッフは、シフト調整がしやすいので断られにくい。
直前の申請は職場への影響が大きくなります。
② 理由を詳しく言わない
有給申請に理由は不要です。「私用のため」で十分。
詳しく説明しすぎると「それなら別の日でも」と言われやすくなります。
③ 計画的に使う
年度初めに「今年はいつ有給を使うか」を大まかに決めておく。
突発的な申請より、計画的な申請の方がシフトに組み込んでもらいやすいです。
「有給が取れない職場」はどう判断するか
管理者として言います。
有給が取れない職場には、長くいない方がいいです。
理由は2つ。
① 人員不足が慢性化している
有給が取れないということは、人が足りていないということ。
これは短期間では解決しません。働き続けるほど消耗します。
② 労務管理の意識が低い
有給取得を軽視している管理者は、他の労働問題にも無頓着な可能性が高い。
残業代・休憩時間・夜勤手当——他の部分でも問題が出てきます。
「有給が取れない」という一点が、職場全体の労務管理レベルを示すバロメーターになっています。
→ 今の職場を続けるか迷っている方はこちら。
リーダー・主任が知っておくべきこと
ここからはリーダー・主任向けの話です。
スタッフから有給申請が来たとき、「忙しいから」という理由だけで断り続けていると、2つのリスクがあります。
① 離職につながる
有給が取れない職場は、スタッフの不満が蓄積されます。
「ここにいても休めない」という判断が、転職の引き金になります。
② 法令違反になる
年5日の有給取得義務を満たせていない場合、施設側に罰則(30万円以下の罰金)が科される可能性があります。
スタッフが有給を取れる体制を作ることは、リーダーとしての責任です。
「申請しやすい雰囲気を作る」だけでも、職場の空気は変わります。
まとめ:有給は取っていい。遠慮しなくていい。
- 有給休暇は労働者の権利。パート・派遣でも付与される
- 年5日の取得は会社側の義務。取らせないのは違法
- 「取れない」には職場の問題と知識の問題の2パターンがある
- 申請は早め・理由は簡潔・計画的に使うと断られにくい
- 有給が取れない職場は、労務管理全体に問題がある可能性が高い
有給を取ることは、迷惑をかけることではありません。
自分の権利を正しく使って、長く働ける環境を守ってください。
あなたの働き方が、少し楽になるヒントになれば嬉しいです。
執筆:てるよし@ケアマネしてない社労士受験中
介護歴20年/複数事業所を統括する管理職&副業ブロガー。
「働き方は変えられる」をテーマに、介護の現場とこれからを語ります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の労務問題については、社会保険労務士や労働基準監督署など専門家へのご相談をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 有給申請を口頭で断られました。どうすればいいですか?
A. まず書面(メール等)で再申請することをおすすめします。記録が残ることで、会社側も慎重に対応します。それでも解決しない場合は、労働基準監督署への相談が選択肢になります。
Q. 退職時に残った有給は消化できますか?
A. できます。退職日までに有給を消化する権利があります。会社が拒否することは原則できません。退職を決めたら早めに有給残日数を確認してください。
Q. 試用期間中でも有給はありますか?
A. 試用期間も勤続年数に含まれます。入社から6ヶ月が経過し、所定労働日数の8割以上出勤していれば有給が付与されます。