処遇改善加算って結局何?──「月1万円上がるはずじゃ…」と聞かれたら、現場管理者はこう答えます

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※記載の法律・制度情報は執筆時点のものです。最新情報は専門家にご確認ください。


先日、スタッフからこんな質問をもらいました。

「ニュースで、処遇改善加算で月1万円くらい給料が上がるって見たんですけど、うちは全然そんなに上がってないですよね。会社、ちゃんと利益出してないんじゃないですか?」

正直、一瞬言葉に詰まりました。「会社によって事情が違うから」としか言えなかった自分に、モヤモヤが残ったんです。今日はそのモヤモヤを、ちゃんと解きほぐしてみようと思います。

介護職って、興味を持って調べようとしても、加算だの区分だの単位数だの、専門用語だらけで一気に敷居が高くなる話題です。でも、自分の給料に直結する話だからこそ、ちゃんとわかった方がいい。今回はそこを、できるだけ噛み砕いて説明します。


そもそも処遇改善加算って何?

ざっくり言うと、「介護職員の給料を上げるために、国が介護報酬に上乗せしてくれる仕組み」です。

以前は「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」という3つの制度がバラバラに存在していて、事業所側の事務作業がかなり煩雑でした。それが2024年6月に一本化されて、「介護職員等処遇改善加算」というひとつの制度になりました。さらに2026年6月には制度が拡充され、訪問看護や訪問リハビリ、居宅介護支援(ケアマネ業務)にも対象が広がっています。

つまり今、この制度は「変わったばかり」のタイミングです。現場のスタッフが「よくわからない」と感じるのは、むしろ自然なことだと思います。

なぜ「月1万円」に届かないのか

ここが今回一番伝えたいポイントです。理由は大きく2つあります。

理由①:サービスの種類によって、そもそも入ってくる金額が違う

処遇改善加算の金額は、ざっくり言うと「事業所の売上(介護報酬の総額)×サービスごとに決められた加算率」で決まります。この加算率が、サービスの種類によって全然違うんです。2026年6月以降、訪問介護は最大28.7%まで上がった一方、通所介護(デイサービス)は最大12.0%程度に留まっています。

つまり、同じ「処遇改善加算」という言葉でも、特養で働いているか、デイで働いているか、訪問介護で働いているかによって、事業所に入ってくる原資の規模がそもそも違うんです。ニュースで見る「月1万円アップ」という数字は、全サービスの平均だったり、特定の条件下での試算だったりすることが多いので、自分の職場の実態と一致しないのはむしろ当たり前です。

理由②:配分の仕方は、各事業所に委ねられている

もうひとつ大事なポイントがあります。加算として入ってきたお金を「誰に・いくら配るか」は、実は各事業所の裁量に任されているんです。

厚労省の調査でも、加算を配分された職員の割合は、経験・技能のある介護職員で92%、その他の介護職員で85%、介護職員以外(看護師や生活相談員、事務職員など)では53.3%と、職種によって差が出ています。つまり同じ職場の中でも、経験年数や職種によって「届く額」が違うのは、制度としてそうなっている、ということです。

「会社が利益を出してないのでは?」への答え

これは、正直に言うとかなり誤解が多いポイントです。

処遇改善加算には、「加算として受け取った額以上、ちゃんと賃金として職員に還元しないと、加算そのものを国に返還させられる」というルールがあります。これはかなり厳しいルールで、事業所側からすると「もらった加算を懐に入れる」というのは、制度上そもそもできない仕組みになっています。バレたら返還どころか、悪質な場合は指定取消のリスクもあります。

なので「会社が利益を出してないのでは?」という疑いは、実はあまり当たっていない可能性が高いです。ただし、「加算はちゃんと入ってきているけど、自分よりも他の職種・他の職員に多く配分されている」という可能性は十分あります。ここは会社が悪いというより、配分ルールの設計の問題です。

ちなみに、もし一時的に賃金改善額が加算額に届かない月があったとしても、それだけで即アウトというわけではありません。実績報告書を提出する前の期間内であれば、不足分を賞与などの一時金として追加で配分することで、返還を求められずに済む取扱いが厚労省のQ&Aでも認められています。管理者としては、この「一時金での調整」という逃げ道があることを知っておくと、年度途中の資金繰りに合わせて柔軟に対応しやすくなります。

管理者として、正直に思うこと

ここからは本音です。

処遇改善加算の申請業務、正直かなり大変です。計画書を作って、全職員に周知して、年度末には実績報告書を出して、配分根拠まで説明できる状態にしておかないといけません。「誰に、どの基準で、いくら配分したか」を後から突っ込まれても答えられるようにしておく必要があって、管理者としては結構な事務負担です。しかも計画書や実績報告書、その根拠になる賃金台帳や周知した記録(掲示物や回覧のサインなど)は、実績報告が終わった後もしばらく保存しておく義務があります。「出したら終わり」ではなく、後から確認される前提で書類を残しておく必要がある、というのも地味に大変なところです。

だからこそ思うんですが、スタッフから「なんで上がらないんですか」と聞かれたとき、「会社の事情だから」で濁すのは、正直不誠実だったなと今は思います。制度の仕組みそのものを、ちゃんと言葉で説明できる管理者でいたい。今回この記事を書いたのも、そのための自分自身の勉強でもあります。

まとめ:モヤモヤは「制度への疑問」であって「不信感」にしなくていい

  • 処遇改善加算は「国が介護職員の給料を上げるための仕組み」
  • サービスの種類によって加算率が違うので、事業所ごとに入ってくる金額の枠が違う
  • 配分方法は各事業所の裁量。職種・経験年数によって届く額が変わる
  • 加算を還元しないと返還・指定取消のリスクがあるので、「会社が横取りしている」は起きにくい構造になっている

制度は複雑ですが、「自分の給料がどう決まっているか」を知ることは、介護職として長く働いていく上で無駄にならないと思います。この記事が、そのモヤモヤを解くきっかけになれば嬉しいです。


執筆:てるよし@ケアマネしてない社労士受験中

介護歴20年/複数事業所を統括する管理職&副業ブロガー。

「働き方は変えられる」をテーマに、介護の現場とこれからを語ります。


よくある質問(FAQ)

Q. パートや派遣でも処遇改善加算はもらえますか?

A. 制度上、正社員に限定されているわけではなく、パートや派遣社員も対象になる可能性は十分あります。ただし実際の配分は事業所の裁量によるため、必ず自分の職場の配分ルールを確認してください。

Q. 処遇改善計画書とは何ですか?

A. 事業所が加算を算定する際に、賃金改善の計画や配分方法をまとめて作成する書類です。作成した計画は職員への周知が義務付けられていますが、周知の方法(掲示・回覧・説明会など)は事業所によって異なります。制度上そういう書類がある、ということを知っておくだけでも十分です。

Q. 管理者として、加算の制度設計や書類作りに困ったときの相談先はありますか?

A. 厚生労働省の委託事業として「介護職員等処遇改善加算 個別相談支援」というサービスがあり、社会保険労務士等の専門家によるオンライン相談を無料で受けられます(1事業所あたり最大6回程度)。加算の要件をどう満たせばいいかわからない、計画書の書き方に自信がない、といった悩みがあれば、社労士に個別で依頼する前に、まずこの無料相談を使ってみるのも一つの手です。


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