最低賃金が上がるたびに震える管理職の話:宿直手当って本当にこの金額でいいんだっけ?

宿直手当、実は「割合で適当に」決めちゃいけないらしい

うちの施設では労基法41条3号の「断続的労働」の許可を労基署からもらって宿直を運用しています。

最低賃金が上がるたびに、なんとなく「前回の比率で計算すればいいか」とやっていたんですが、これがどうやら違うようです。

調べて分かったのは、41条の許可と、最低賃金を減額するための許可はまったくの別物だということ。

41条許可はあくまで「労働時間・休憩・休日の規定を適用しない」という話で、最低賃金を下げていい根拠にはならないそうです。

最低賃金を下げるには、最低賃金法第7条第4号・同法施行規則第4条(対象者の規定)・第5条(減額率の規定)に基づく「断続的労働に従事する者の最低賃金の減額の特例許可」という、もう一段別の許可が必要とのこと。

これ、地味に見落としがちなポイントだと思います。うちも許可書を引っ張り出してきて、初めてきちんと中身を確認しました。

減額の計算式は、意外とちゃんと決まっていた

減額特例許可書には、以下の3つの数字が書いてあるはずです。

  • 所定労働時間数(A)
  • 実作業時間数(B)
  • 手待ち時間数(=A-B)

これを使って、減額できる率の上限は次の式で決まるようです。実際に何%減額するかは、この上限の範囲内で職務内容・成果・労働能力・経験などを総合的に勘案して個別に決めるものらしく、この式でいきなり「確定の減額率」が出るわけではないようです。

減額率の上限(%) =(A-B)× 40 ÷ 100 ÷ A × 100

仮にA=15時間、B=3時間だとすると、

(15-3)×40÷100÷15×100 = 32%

この場合、上限は32%まで、ということになります。この上限の範囲内で決めた減額率を最低賃金額にかけて、下限を計算します。

最低賃金 × (1-減額率)= 減額後の時間単価

減額後の時間単価 × 拘束時間 + 深夜割増分 = 日給の下限

うちの場合、これで計算し直したら、これまで設定していた宿直日給が「ギリギリ上回ってはいるけど、思ったより余裕がなかった」という結果に……。毎回なんとなくで決めていたら、いつか下回っていたかもしれないと思うと、ちょっと背筋が伸びました。

宿直時間の中で実際に働く時間(実作業時間)を切り分けて定める手続き自体、思っていたよりずっと手間がかかる作業でした。

ここは争いが生じやすい部分でもあるようなので、詳しくはご自身の許可書と照らし合わせて、顧問社労士や労基署に確認することを強くおすすめします。

正社員の月給、どの手当を含めて計算するのか問題

宿直手当だけで安心していたら、次に「正社員の月給、ちゃんと最低賃金クリアしてる?」という話になりました。

最低賃金の計算に含める賃金・含めない賃金は、法律で「除外するもの」が決まっているらしく、そこに載っていないものは原則すべて含めるという発想のようです。

調べていて分かった除外リストはこんな感じでした。

除外される賃金 備考
精皆勤手当 まるっと除外
通勤手当 まるっと除外
家族手当 まるっと除外
時間外・休日・深夜の割増賃金部分 割増部分のみ除外(基礎給は含む)
賞与など臨時に払うもの 除外

ここでうちがハマったのが「夜勤手当」でした。うちの夜勤手当は深夜割増込みの定額制なんですが、これ、全額を除外していいわけではないようです。除外できるのは「法定の深夜割増に相当する部分」だけで、残りの固定部分は計算に含める必要があるとのこと。定額の夜勤手当を運用している施設は、地味にここでつまずきそうな気がします。

(夜勤手当の割増計算そのものについては、以前まとめた記事も参考にしてください→関連記事参照)

処遇改善手当を最低賃金に含めていいのか問題

これも調べていて一番モヤモヤしたポイントです。

厚労省のQ&Aを見ると、「処遇改善加算が臨時ではなく毎月固定的に支払われる通常の賃金であれば、最低賃金と比較する賃金に含める」とされているようです。つまり、含めること自体は違法ではない。

ただし同じQ&Aの中で「最低賃金を満たした上で、賃金の引き上げを行うことが望ましい」という一文もあって、これはあくまで推奨であって義務ではないようです。

法律上はセーフでも、処遇改善加算は本来「既存の賃金への上乗せ」という制度趣旨があるので、最低賃金対応そのものに加算を充てる運用は、実績報告のときに指摘されるリスクがある……というのが今のところの理解です(このあたりは介護報酬制度側の話で、最低賃金法とはまた別の論点のようです)。

うちは正社員とパートで取り扱いを分けていたんですが、法律違反ではないにしても、実績報告の書き方次第では説明を求められる可能性があるなと、ちょっと反省しました。

月給を時給に直すときの「月平均所定労働時間」の出し方

最後に、月給を時給換算するときの分母(月平均所定労働時間)の出し方です。これも「1日の労働時間×勤務日数÷12」のような単純計算ではなく、ちゃんと決まった式があるようでした。

月平均所定労働時間 =(365日-年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月

年間休日をベースに計算するのがポイントで、複数の労働局が公式サイトで同じ式を使っていたので、これはかなり信頼度が高そうです。

この月平均所定労働時間で、対象となる賃金(基本給+算入対象の各種手当)を割って、地域別最低賃金の時間額と比べればOKのようです。


調べていて浮かんだ疑問

Q. 減額特例許可は一度取ったらずっと有効?

どうやら有効期限があるようです。うちの許可書にも期限が書いてあって、期限が切れる前に再申請が必要とのこと。年1回の最低賃金改定のタイミングと合わせて、期限管理を仕組み化しておいた方が良さそうだと感じました。

Q. 深夜割増部分だけ除外するって、具体的にどう計算するの?

夜勤手当が「基礎時給×深夜割増率×深夜時間」ではっきり計算式化されていれば簡単ですが、定額制の場合は「法定深夜割増相当額」を逆算して控除する必要があるようです。ここは施設ごとの給与規程の作り方次第で手間が全然変わるところで、うちも規程を見直すきっかけになりました。


今回書いた内容は、あくまで調べてみて自分なりに理解した範囲のメモです。減額率の考え方や算入賃金の線引きなど、実際に争われた事例もあるようなので、最終的な数字の確定や制度適用の可否は、必ず顧問の社会保険労務士または管轄の労働基準監督署に確認してから進めてください。


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