傷病手当金は非課税だからお得?3パターンで計算してみたら全然そうじゃなかった話

傷病手当金の基本

健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けなくなった場合に、連続する3日間の「待期」を経て、4日目以降から支給される制度のようです。支給額はおおむね給与(標準報酬日額)の3分の2、最長1年6か月まで受け取れるとのこと。

社会保険に加入していない場合(週の所定労働時間が短いパート・アルバイトなど)は、そもそも健康保険の被保険者ではないため、傷病手当金の対象外になります。ここは実際に対応した中でも、最初に必ず確認すべきポイントだと感じました。

3パターンで試算してみた

実際に条件を変えた3つのケースで、有給消化と傷病手当金の手取りを試算してみました。いずれも「骨折で2ヶ月労務不能」という設定です。

ケース 条件 結果
① 週19時間・時給制(健保未加入、雇用保険のみ) 週20時間の社会保険加入要件に届かないため、そもそも傷病手当金は制度上支給されない。有給消化一択
② 週40時間・健保加入・有給40日 標準報酬月額から傷病手当金日額を算出して比較した結果、手取りベースで有給消化の方が上回った
③ 週24時間・短時間労働者の健保加入要件を満たすケース 標準報酬月額が下がることで社会保険料負担も軽くなり、①の有給消化の手取りがむしろ増える逆転現象が発生した

3パターンを比較した結果、「有給消化>傷病手当金」は偶然ではなく、制度設計上ほぼ必然という結論になりました。理由は、傷病手当金が標準報酬日額の2/3に固定されている一方、有給休暇は満額支給されるためです。加えて、傷病手当金を受給している間も社会保険料の自己負担分は免除されず(会社が一時的に立て替えるケースはあっても、最終的には本人負担)、非課税というメリットだけでは、この差を埋めきれないようです。

ただし、一般化には3つの注意点がある

このシミュレーション結果を、そのままどのケースにも当てはめるのは危険だと感じたので、注意点も整理しておきます。

1. 有給残日数が休業日数に満たない場合は「順序」の問題になる:有給が尽きた後は、傷病手当金に頼らざるを得ません。「どちらが得か」ではなく「先に何を使うか」という話に変わります

2. 本人の手取り最大化と、会社の人件費負担は視点が逆転する:有給消化は給与を会社が全額負担しますが、傷病手当金は健康保険(保険者)からの支給です。本人にとって有給が有利でも、会社側の負担という観点では傷病手当金の方が軽くなります

3. 標準報酬月額が実態の賃金と乖離している場合は、例外が起こり得る:昇給・降給の直後などで標準報酬月額の改定が追いついていないケースでは、理論値と実際の手取りにズレが生じる可能性があります

じゃあ、いつ傷病手当金を使うべきなのか

整理すると、傷病手当金が本領を発揮するのは、有給休暇を使い切った後の長期療養のケースのようです。有給には日数の上限がありますが、傷病手当金は最長1年6か月まで受け取れます。短期的には有給の方が手取りは良いものの、長期化するケースでは、有給を使い切った後の収入源として傷病手当金が欠かせない存在になります。

「まず有給、それを使い切ったら傷病手当金」という順序自体は理にかなっているようです。うちで対応したケースも、結果的にこの順番でしたが、当時は「非課税だから傷病手当金を先に使った方が得なのでは」と一瞬悩んだ記憶があります。改めて計算してみて、順番の妥当性を確認できました。


調べていて浮かんだ疑問

Q. 傷病手当金と有給休暇は同時にもらえる?

傷病手当金は「給与が支払われない状態」が支給の条件のようなので、有給休暇を取得している日(給与が満額支払われる日)は、傷病手当金は支給されない(調整される)とのことです。

Q. 社会保険未加入のパート職員が長期療養する場合、代わりの制度はある?

傷病手当金が使えない場合、有給休暇を使い切った後は無給になってしまうケースもあるようです。この場合の代替手段(例えば障害年金の検討など)は個別性が高いので、専門家に相談した方が確実そうです。


今回書いた内容は、あくまで調べてみて自分なりに理解した範囲のメモです。実際の手取り額は標準報酬月額や扶養状況などで変わってくるため、最終的な試算や制度適用の可否は、必ず顧問の社会保険労務士または管轄の年金事務所・全国健康保険協会に確認してから進めてください。


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